犬種別遺伝性疾患(07年度登録頭数順) | 1位ダックスフント | 2位チワワ | 3位プードル | 4位ヨークシャーテリア | 5位ポメラニアン |
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38
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60 | 114 | 83 | 6 | 35 | 22 | 30 | 58 | 85 | 79 | 23 | 35 | 15 | 24 |
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形質 | 血管・血液 | 脳神経 | 筋骨格・結合組織 | 呼吸器 | 循環器 | 消化器 | 腎尿路 | 先天奇形 | 内分泌・代謝 | 眼・耳・鼻 | 腫瘍 | 皮膚 | アレルギー・免疫 | その他 |
循環器 35 |
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通番 | 疾 患 名 | 主 な 症 状 | 備 考 | 遺伝形態 | 主な該当犬種 |
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33 |
Aortic aneurysm, familial thoracic 家族性胸部大動脈瘤 |
かなりの間無症状で悪化する(破裂に近づくほど)と背中を痛がったり咳が多くなったりする | 心臓に近い位置の大動脈の一部が先天的に弱く、通常の血流の圧により弱まった部位が広がる(膨らむ)状態。血管の腫れで大動脈逆流弁を起こすこともある。破裂後ほとんど死亡 | 家族性(主にADだがARもある) | レオン |
34 |
Aortic stenosis, subvalvular 大動脈弁下狭窄症 |
呼吸・脈拍が速い。食欲無、体重減少。新生児では乳飲みが悪い、体重が増えない。心臓の病気はそのような症状が出た時には重症であることが多い | 血液を全身に送り出す左心室の出口の大動脈弁に筋肉の張り出しがあって狭い状態。手術後の予後は悪い | 常染色体性、unknown | ボクサー、ゴル |
38 |
Arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy 催不整脈性右室心筋症 |
単相心室性不整脈、失神、および心臓突然死 |
Gene: STRN 右室心筋の局所的な脂肪変性や線維化により右室拡大→右室壁運動異常 |
常染色体性不完全優性 | ボクサー |
52 |
Atherosclerosis アテローム性動脈硬化症 |
不整脈・頻脈とそれによる呼吸困難・咳・元気消沈 | 別名・粥状(じゅくじょう)動脈硬化症、ヒトの動脈硬化と同様かなり悪化するまでほとんど症状は出ず。アテロームとはお粥状の脂肪質のかたまりで動脈内に付着して血管を狭める。アテローム性動脈硬化病変は心臓、脾臓、腎臓、肺、膵臓、消化管、泌尿生殖器官、目、前立腺や膀胱を含む多くの臓器における大動脈と筋肉の動脈に見られ甲状腺機能低下を起こすこともある | 常染色体性、unknown | * |
56 |
Atrial fibrillation 心房細動 |
不整脈・頻脈・運動嫌い・失神または無症状 | 心房の収縮がない。心不全を示していることが多い。不規則な心拍数(急激な増加は毎分180以上にもなる)や不整脈により心臓から送り出される血液の量が減少することで心房の各部分が無秩序に興奮している状態。僧帽弁閉鎖不全症や拡張型心筋症など心房が非常に拡大する疾患で発生する。基礎となる心疾患のない心房細動は兆候が無い。 | 常染色体性、unknown | ボクサー |
57 |
Atrial septal defect 心房中隔欠損症(ASD) |
無症状から呼吸困難やチアノーゼまでさまざま | 左心房と右心房の一部が欠損し穴が開いた先天性心奇形、しばしば心臓の他の疾患と合併する | 常染色体性、unknown | ボクサー、ドーベルマン、サモエド |
86 |
Cardiomyopathy 心筋症 |
心機能障害を伴う心筋疾患 | 肥大型、拡張型、拘束型、不整脈原性右室心筋症、分類不能型に分類される | 常染色体性、unknown | Eコッカー、ボクサー、ドーベルマン、ラブ、IWハウンド、ポーチュギーズ、猫 |
87 |
Cardiomyopathy, dilated 拡張型心筋症 |
心室(とくに左心室)拡張と収縮力低下とうっ血性心不全を伴う重篤な心筋病変 |
Gene:PDK4 心筋の収縮機能不全により心室腔が拡張する疾患。カルチニン欠乏との関係も示唆されている |
AR | 多 |
88 |
Cardiomyopathy, hypertrophic 肥大型心筋症 |
肺水腫による呼吸困難など | 左心室壁肥厚と左室拡張障害を伴う心筋疾患。血栓塞栓症が合併しやすく後肢の不全麻痺につながる、高齢発症もよくある | 常染色体性、unknown | ヨーキー |
89 |
Cardiovascular malformations 心血管奇形 |
心臓病の症状 | さまざまな心血管系の形成不全、奇形 | 常染色体性、unknown | * |
111 |
Chronic valvular disease 慢性弁膜疾患 |
とくに夜間の咳や落ち着きのない精神不安定、粘膜の赤みが薄まる、肝肥大による腹部膨満、泡状の鼻血、失神、最終的に心不全 |
Genes:THRB,THR,THRA 略称CVD。原因遺伝子が判明しているものもあり犬の心臓病ではもっとも一般的。僧帽弁逆流症を引き起こす。伏せると呼吸が苦しいため立ったまままたはオスワリのままという症状もある |
常染色体性、unknown | キャバリア |
147 |
Conotruncal heart malformations 円錐動脈幹形成異常 |
心室中隔欠損によるチアノーゼ、運動不耐性、収縮期雑音、右室肥大、肺の血管に減少循環 |
(ヒトでは22q11.2欠失症候群)多くは早期死亡。円錐動脈幹領域の欠損は4段階に分類されておりグレード1はほとんど無症状。その他の大血管の障害を持っていることが多い。
*円錐部動脈幹奇形とはファロー四徴症、総動脈幹症、大動脈弓離断など |
多因子(ヒトでは単一遺伝子) | プードル、ビーグル、キースホンド |
148 |
Cor triatriatum Dexter 右房性三心房心 |
心臓病の症状、静脈還流の阻害 | エプスタイン奇形。三心房心は左房が異常な隔壁によって2つに分割された状態で、壁の欠損部分が大きければ症状は軽くなり発見が遅れる | 常染色体性、unknown | 秋田犬、Eブルドッグ、ピレ |
207 |
Endocardial fibroelastosis 心内膜線維弾性症 |
新生児期の哺乳不良、成長不良、心不全 | 心内膜の肥厚により心臓内腔が拡大するため収縮機能が著しく低下、予後不良 | unknown | グレデン |
282 |
Heart defect, congenital 先天性心疾患 |
脈拍の異常、成長遅延など心臓病の症状全般 | 先天的(生まれつき)に心臓に異常がある場合の総称 | * | 多 |
283 |
Heart defect, hypertrophic 肥大性心疾患 |
咳、息切れ、運動不耐性、突然死などの心臓病の症状 |
肥大型心筋症。通常左心室(肺から左心房を通った新鮮な血液を全身へ力強く送り出す部屋)の心筋細胞が肥大して心室壁が(心臓の内にも外にも)厚くなり拡張障害が起こる。
拡張期の短縮で全身に流れる血液量が不足したり心室から心房へ逆流したりして肺水腫からの呼吸困難、が生じるまで無症状(と感じられる)なことが多々ある。 大動脈弁付近の壁肥厚による閉塞性肥大型心筋症→ 心流出路狭窄による心拍出量低下 心尖部の壁肥厚による非閉塞性肥大型心筋症→ 心室筋肥大による左室拡張能の低下および不整脈 |
unknown | 多 |
329 |
Hypertension 高血圧症 |
脳、眼、心臓、腎臓障害 | 長期間症状が現れないか他の心疾患の合併など | unknown | * |
330 |
Hypertension, essential 本態性高血圧症 |
初期に元気消沈 | 原因不明の高血圧。原因が不明とはこの場合明らかな腎臓疾患・クッシング症や甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患・副腎腫瘍・薬剤による副反応などが見当たらない場合を指す。 | unknown | * |
414 |
Mitral stenosis 僧帽弁狭窄症 |
易疲労感、呼吸困難、肺高血圧、肺水腫、心不全、心房細動 | 僧帽弁口の狭窄によって左心房から左心室へ血液が流れにくくなる心臓疾患 | 常染色体性、unknown | * |
415 |
Mitral valve disease 僧帽弁膜症 |
息切れ、呼吸困難、動悸、不整脈、脳梗塞、心筋梗塞 | 僧帽弁は右心室と左心室の間にある弁。僧帽弁狭窄症と僧帽弁逆流症を僧帽弁膜症と言う。僧帽弁狭窄症は弁の開きが不十分で僧帽弁逆流症(閉鎖不全)は弁の閉鎖が不十分 | 多因子 | * |
539 |
Patent ductus arteriosus 動脈管開存 |
心臓疾患症状、短絡血液量と肺血管抵抗性で症状が変わる、右心不全または左心不全 | 胎児の時は肺呼吸をしないので心臓に戻る血液を肺に送らないため、直接肺動脈と大動脈が動脈管(ボタロー管)で連結されている。通常は出生後肺呼吸を始め体内の酸素濃度があがることで、酸素濃度への感受性が強い動脈管は数時間内に自然に閉鎖する。オスよりメスの発症率が高い。早期死亡もよくある | 常染色体性、unknown | 多 |
540 |
Patent ductus arteriosus and pulmonary hypertension 動脈管開存及び肺高血圧症 |
左心室肥大、咳、速脈、チアノーゼ | 肺動脈圧の異常な上昇による。動脈管開存により肺動脈は右心室と大動脈からの血流を受け肺への血流量が増え肺動脈拡張となる(拡張すると圧力が高まるが最低血圧は下がる)。動脈管から肺動脈に流れるのでより多くの血液を押し出す左心室は肥大を起こす。治療は動脈管の結紮 | 常染色体性、unknown | Pコーギー |
541 |
Patent ductus venosus 静脈管開存 |
肝臓周辺の障害 | 静脈管は胎児の時に存在する。臍帯静脈と下大静脈をバイパスして胎盤からの臍帯静脈血を下大静脈、さらに卵円孔から左房-左室-上行大動脈へと送る役割をしている。通常出生後数日で閉鎖する | 常染色体性、unknown | * |
546 |
Pentalogy of Fallot ファロー五徴(ごちょう)症 |
チアノーゼ、腹水、呼吸困難、運動不耐 | ファロー四徴症(心室中隔欠損・肺動脈狭窄・大動脈騎乗・右心肥大を伴う先天性心奇形)に心房中隔欠損を合併 | unknown | 韓国のSapsaree犬 |
552 |
Persistent right aortic arch 右大動脈弓遺残 |
成長遅延、痩せ、食後の吐出(離乳後)、食道拡張、誤嚥性肺炎 | 右方の第四動脈弓が発達した結果として発生する血管輪異常。心雑音が認められたり無症状だったり奇形の度合いによって様々 | 常染色体性、unknown | ドーベルマン、フォックステリア、Gシェパ、グレートデン、Iセッター、イタグレ |
553 |
Persistent right aortic arch, with subclavian artery and ligamentum arteriosum *鎖骨下動脈と動脈管索を伴う右大動脈弓遺残 |
* | ヒトのDiGeorge症候群(副甲状腺・胸腺無形成症)との類似 | 常染色体性、単一ではない | Gピンシャー |
554 |
Persistent truncus arteriosus 総動脈幹遺残 |
多呼吸、哺乳力低下、発育不良、易感染性(呼吸器)、四肢の先の速脈、うっ血性心不全 | 胎児期の動脈は1本だが次第に壁が出来て大動脈と肺動脈に分かれて生まれる仕組みになっているが、大動脈と肺動脈が分離せず心臓から1つの大血管が出る状態。動脈幹中隔と円錐部中隔の形成不全が原因と考えられている。早期死亡が大半だが中には無症状で老犬になってから診断されることもある | 常染色体性、unknown | * |
598 |
Pulmonary stenosis 肺動脈狭窄症 |
新生児は呼吸時に首を前後に動かす、呼吸数と脈拍が低い、乳の飲みが悪い。息切れ、心雑音(軽度)、右心不全(重度) | 意識喪失や突然死にもつながる先天性心疾患。3番目と4番目の肋骨の間の不規則なリズムと心雑音を聴診器で判断できることが多いようだ | 常染色体性、unknown | ビーグル、Eブルドッグ、チワワ、フォックステリア、サモエド、Sシュナ、Mシュナ |
657 |
Subaortic stenosis 大動脈弁下狭窄症 |
運動不耐性、心雑音、不整脈 | ***上ならウイリアムズ症候群。僧帽弁閉鎖不全症を合併しやすい。50%程度の犬は3歳位で突然死となる説もあり |
unknown ADの例あり |
* |
663 |
Tachycardia 頻拍症、頻脈症 |
脈拍数が多い | 脈拍数が正常範囲を超えて増加した状態。洞頻脈、発作性上室性頻脈、発作性心室性頻脈、心房細・粗動、心室細・粗動によってみられることもある | unknown | * |
671 |
Tetralogy of fallot ファロー四徴(しちょう)症 |
収縮期雑音、右室肥大 | 心室中隔欠損・肺動脈狭窄・大動脈騎乗・右心肥大を伴う心奇形 | unknown | * |
684 |
Tricuspid valve dysplasia 三尖弁(右房室弁)形成不全 |
心雑音、右心不全症状、その他心臓病の症状 | 三尖弁・さんせんべん・tricuspid valveは心臓の右心房と右心室の間にある弁。右房室弁ともいう。問題となる形成不全は閉鎖不全。血液は全身→右心房→(三尖弁)→右心室→肺→左心房→左心室→全身と循環するのだが、三尖弁の役割は血液が右心室から肺に送り出される際、右心房に血液が逆流しないようにすること。Ebstainエプスタイン奇型やマルファン症候群などでも弁の構造異常が見られる。#僧帽弁閉鎖不全症・#肺高血圧症などで引き起こる場合もある | unknown | * |
690 |
Valvular pulmonic stenosis 肺動脈弁狭窄症 |
心臓病の症状、右室肥大 | 肺動脈弁の狭窄を原因とする右心室からの血液流入を呈する心臓弁膜症。この結果、肺への血液流量が減少する。 | unknown | * |
694 |
Ventricular arrhythmias and sudden death *心室性不整脈による突然死 |
* | * | unknown | * |
695 |
Ventricular septal defect 心室中隔欠損症、VSD |
心臓収縮期に心雑音、孔の大きさや状態によって無症状から心不全まで | 左右の心室の間にある中隔が1箇所または複数開口している先天的な心臓奇形。ほかの心血管奇形に合併することも多い。開口部が小さいと背一様とともに閉鎖することもあるが通常は欠損孔を通してシャントか引き起こされるため血液循環の異常が生じる | unknown | * |